2014-08-26 18:59:18

韓国各界要人との出会い:教皇挨拶(2014.8.14 ソウルにて)


親愛なる友人の皆さん

「静かな朝の国」、韓国を訪れ、この国の美しい自然のみならず、素晴らしい国民と、その豊かな歴史と文化に触れることができ、大変うれしく思います。

この国のこうした遺産は、暴力や、迫害、戦争の歴史の中で 苦しい体験に会ってきました。けれどもこのような多くの試練にも関わらず、昼の暑さも、夜の闇も、いつもすがすがしい朝に、すなわち正義と、平和、一致に対する変わらぬ希望にその場を譲ってきました。希望とはなんと大きな賜物でしょう。韓国の国民だけでなく、地域と全世界の人々の幸せにかかわるこれらの目標を、わたしたちは勇気を持って追い続けましょう。

皆さんの心からの歓迎に心から感謝します。わたしは皆さんと共にいて、すぐに自分の家にいるような気がしました。

わたしの韓国訪問は、第6回アジア・ユース・デーを機会としたものです。アジアという広い大陸全体から、カトリックの若者たちが同じ信仰の喜びを分かち合うためにここに集います。また、わたしの訪問中、キリスト教信仰のもとに殉教した人々、パウロ・ユン・ジチュン(尹持忠)と123人の同志殉教者の列福式も行われます。この2つの行事は互いに補い合う性格を持っています。

韓国の文化は、高齢者たちの尊厳とその叡智を良く理解し、社会における彼らの役割を尊重しています。 わたしたちカトリック信者は、信仰のために殉教した先人たちを崇敬します。なぜなら、彼らは信じそしてそれに沿って生きようとした真理のために、生命を捧げることをいとわなかったからです。これらの殉教者たちは、神のため、隣人の善のために精一杯生きるようにと、わたしたちに教えてくれるのです。

偉大な優れた民は、自らの古い伝統を愛するだけでなく、若い人々の存在を大切にし、過去の遺産を彼らに伝え、それを現代の挑戦に活かすよう努めます。今回のように若者たちが集う機会はいつでも、わたしたち皆にとって、彼らの抱く希望や不安に耳を傾ける貴重なチャンスです。またそれは同時に、次の世代にわたしたちの価値をいかに伝えているか、若者たちにどのような社会を準備し渡そうとしているのかを考えるようわたしたちに招いています。こうした中で、若い人たちに平和の賜物を伝える必要性について考えることが、特に重要になってくるのです。

この呼びかけは、長い間平和の欠如に苦しんだ韓国においては、特別な意味を持っています。朝鮮半島における和解と安定のための努力を、わたしは高く評価すると共に、恒常的平和実現のための唯一の道であるこうした努力を励ましたいと思います。韓国の平和への取り組みは、戦争に疲れている今日の世界全体の安定に影響を及ぼすものとして、わたしたちが特別に関心を寄せるものです。

平和追求は、わたしたち一人ひとりにとって、特に忍耐強い外交活動を通して人類家族の共通善達成の任務を担う皆さんにとって、一つの挑戦でもあります。それは憎悪と不信の壁を打ち破り、和解と連帯の文化を推進する絶えざる挑戦です。事実、外交活動は、平和とは注意深く分別ある対話と傾聴によって実現するのであり、相互非難や無益な批判、力の誇示によってではないという、揺るがぬ根気強い確信の上に立脚するものです。

平和とは、単に戦争がないということではありません。それは正義が造り出すものです(イザヤ 32,17)。徳としての正義は、大きな忍耐を必要とします。過去の不正を忘れないだけではなく、赦しや寛容や協力を通してそれを乗り越えることを必要とします。また、それは相互の尊重、理解、和解という土台を築き上げながら、互いに益となる事柄の識別と、それを達成しようとの意志をも必要とします。わたしたち皆が平和実現への取り組みをより強めながら、平和の構築とそのための祈りに献身できることを心から願っています。

親愛なる友人の皆さん、政治界と市民間の指導者としての皆さんの努力は、つまるところ、次の世代のために、いっそうの平和と正義と繁栄に満ちた、より良い世界を作り上げることに向けられています。グローバル化がますます進む世界において、共通善や進歩発展をめぐる理解は、単に経済的な観点に留まらず、人間的なものでもあるべきと、わたしたちは経験から学びました。発展した国々の多くがそうであるように、韓国もまた社会の様々な問題や、政治的分裂、経済格差、環境の責任ある管理などの問題を抱えています。社会のすべての人々の声に耳を傾けること、開かれたコミュニケーション精神、対話や協力の推進がどれほど大切なことでしょうか。

同様に、貧しい人々、弱い立場の人々、声なき人々に特別な注意を向け、彼らの緊急な必要を満たすだけではなく、これらの人々が人間的・精神的にはぐくまれるよう心を配ることも大切です。韓国の民主主義が強化され続け、今日、特に必要とされる「連帯のグローバリゼーション」、人類家族のすべてのメンバーの総合的な発展を目的とする連帯性においても、先端を行くことをわたしは心から期待しています。

聖ヨハネ・パウロ2世教皇は、今から25年前の第2回韓国訪問の際、「韓国の将来は国民の中の有徳、聡明で、非常に霊的な男女の存在にかかっている (1989年10月8日) 」との確信を示しました。今日、わたしもこの言葉に呼応して、韓国カトリック共同体がこの国の国民生活にくまなく携わっていくようにとの絶えざる望みを表明したいと思います。教会は青少年の教育、貧しく困窮した人々への連帯精神の促進に寄与すると共に、若い人たちが、先代から受け継ぎ、自分たちの信仰から生まれた賢明さと先見性を、国家の大きな政治・社会問題に役立てることができるよう、若い世代の市民の養成に貢献することを望むのです。

大統領をはじめ、すべての方々に、皆さまの温かい歓迎に対する感謝を改めて申し上げたいと思います。主が皆さん一人ひとりと、愛する韓国国民を祝福してくださいますように。 特に、主がお年寄りを、そして若者たちを祝福してくださいますように。記憶を保ち、勇気を呼び起こす彼らは、わたしたちの最も大きな宝であり、未来への希望なのです。









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