2012-11-29 18:46:20

特集:教皇の説教 「中東シノドス後の使徒的勧告」署名式


9月中旬レバノンを司牧訪問した教皇ベネディクト16世は、典礼暦で十字架称賛を祝った14日、ハリッサにおいて「中東のためのシノドス後の使徒的勧告」への署名式を行なわれた。

この使徒的勧告署名式における教皇の説教は以下のとおり。

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親愛なる兄弟姉妹の皆さん

「中東シノドス後の使徒的勧告」の署名式が、十字架称賛の祝日に当たるのは、大変摂理的なことです。十字架称賛の祝日は、335年、この東方で始まりました。それは、コンスタンティヌス大帝が主の墓の上に建立した大聖堂を献堂してすぐ後のことでした。

今年、あと一ヶ月ほどで、コンスタンティヌス帝の「十字架の幻視」から1700年が記念されます。彼は十字架のしるしを見、「このしるしをもって勝利するであろう」という声を聞きました。この後、彼は「ミラノの勅令」に署名します。そして、コンスタンティノーポリに、自分自身の名前をつけました。

このたびの使徒的勧告は、十字架称賛の光の下に、特にキリストの名、クリストスというギリシャの言葉は、キリストのX(キ)と、P(ロ)との、2文字で始まりますが、このキリストの御名の下に理解し、解釈されるべきものです。このように勧告を読むならば、わたしたちは洗礼を受けた者としての、そして教会そのものの、正真正銘の意義を発見するでしょう。そして、それは同時に、交わりを通して、交わりの中での証しへの呼びかけとなるでしょう。

キリスト教的交わりと証しは、まさしく過ぎ越しの秘儀、キリストの十字架と死と復活の神秘の上にその土台を持つのではないでしょうか。また、その中にこそ、これらの神秘の完成があるのではないでしょうか。

十字架と復活の間には、キリスト者が決して忘れてはならない、切っても切れない関係が存在します。この両者の絆がなければ、十字架の称賛においても、苦しみや死を単なる不幸な運命とみなすことになってしまうのです。

キリスト者にとって、十字架の称賛とは、人間に対する神の無条件の愛を伝えることなのです。それは信仰の行為です。復活を視野に入れて十字架を称賛するということ、それは愛の全体性を生き、表すことです。それは愛の行為です。十字架の称賛、それは真のキリスト教的証しの源泉である、兄弟的・教会的な交わりの先駆者となることにも通じます。 これはまた希望の行為でもあるのです。

中東における教会の現状を踏まえ、シノドス参加司教たちはこの地に生きるキリストの弟子たちの喜び、恐れ、そして希望について熟考しました。こうして全教会は、人的にも物質的にも難しい状況に置かれ、恐れと不安の強い緊張感の中を生きながらも、困難を乗り越えて、彼らの存在に意味を与えるキリストに従うことを望む多くの人々の、苦しみの叫びを聞き、その絶望的な眼差しを見つめたのです。

このために、わたしはこの使徒的勧告が聖ペトロの第一の手紙の内容に沿うことを望みました。 同時に、教会はこの地の教会が持つ多くの素晴らしさと崇高さを知ることができました。

中東に生きる、親愛なるキリスト教徒の皆さん、あなたがたのためにいつもどれほど神に感謝していることでしょう。信仰における皆さんの勇気を、どれほど賛美することでしょう。人となられた神の御子を最初に受け入れたこの地方で、皆さんが生き生きと保ち続けた無限の愛の炎のゆえに、どれほど感謝していることでしょう。また、神の子らに対して絶えず示された人道的な連帯、教会的・兄弟的交わりのために、わたしたちはどれほど感謝していることでしょうか。

中東の教会は、キリストと同じ眼差しで、将来のために現在を見つめさせてくれます。
中東の教会は、光栄に満ちた十字架を忘れさせ、見えなくさせ得る大変困難な時期、痛ましい状況にあっても、様々な霊的努力によって、キリスト教の本質、すなわちキリストに忠実に従うことを実現するための道を求め続けています。 

今こそ、憎しみに対する愛の勝利、復讐に対する赦しの勝利、支配に対する奉仕の勝利、傲慢に対する謙遜の勝利、分裂に対する一致の勝利を祝う時です。

今日、十字架称賛の祝日の光の下、すべての皆さんに恐れないよう、また真理に留まり、信仰の清さを保つよう招きたいと思います。

これが栄光に満ちた十字架の言葉です。これこそ十字架の逆説です。わたしたちの苦しみを神に対する愛の叫びに、隣人に対する憐れみの叫びに変えることのできる逆説です (2コリント4,7-18)。これは単なる寓意的な表現ではありません。

教会は、キリストの弟子一人ひとりが真に聖性に達するよう、そのための努力をするよう、善い材料を提供してくれます。

この勧告は、唯一の創造主なる神への信仰に根差した、真の宗教対話に道を開きます。 同時に、真理と福音の愛において、復活されたキリストの「あなたたちは行って、すべての国の人々を弟子にしなさい。父と子と聖霊の御名に入れる洗礼を彼らに授け、わたしがあなたがたに命じたことを、すべて守るように教えなさい。わたしは世の終わりまで、いつもあなたたちと共にいる」という命令から力を得る人間的・霊的・愛の熱意に満ちたエキュメニズムにも貢献することをも望みます。(マタイ28,19-20)

勧告は、その全体をとおして、主のすべての弟子たちが洗礼を通してなった者、すなわち神から照らされた者、光の子、この世の不安な闇にあって、光を輝かせる新しいともし火として、完全に生きることができるよう助けます。この公文書は、信仰を歪め、キリストの輝きを曇らせるすべてのものを取り去ることを目指しています。

交わりはキリストへの真の帰依、証しは光栄ある十字架に完全な意味を付与する過ぎ越しの神秘の輝きです。 わたしたちは「神の知恵、神の力である十字架上のキリストを告げ知らせ、彼に従いましょう」。

「小さな群れよ、恐れることはありません」。「このしるしにおいてあなたは勝利するだろう」というコンスタンティヌス帝にされた約束を思い起こしてください。

中東の教会よ、恐れることはありません。実に主は世の終わりまであなたたちと共におられます。

恐れることはありません。全教会が人的に、霊的に、いつも皆さんと共にいます。この希望と励ましの気持ちを込めて、次の日曜日、愛する中東の教会の皆さんにこのシノドス後の勧告「中東における教会」を手渡したいと思います。「皆さん、勇気を出してください」。

神の御母、聖母マリアの取次ぎによって、皆さん一人ひとりの上に神の豊かな恵みを祈ります。中東のすべての民族に、平和と兄弟愛と宗教の自由のもとに生きる恵みを、神が与えてくださいますように。








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