聖金曜日：教皇による十字架の道行き、家庭をテーマに

キリストの十字架上での死を記念する聖金曜日、６日、教皇ベネディクト16世は伝統の宗教行事をとり行われた。

夕方、教皇によってバチカンの聖ペトロ大聖堂で主の受難の儀式が司式された。

儀式では、ことばの典礼に続き、教皇付説教師ラニエーレ・カンタラメッサ神父による説教が行われた。

この後、教皇はじめ参加者らは一人ずつ十字架の前に進み出、十字架を心を込めて崇敬した。

夜からはローマ市内のコロッセオで教皇による十字架の道行きが行われた。

十字架の道行は、イエスが死刑の宣告を受けてから、十字架上で最後を遂げ、墓に葬られるまでの過程を、14の場面に分け、各所ごとを黙想し祈る信心業。

毎年、コロッセオでの十字架の道行きのために、黙想と祈りのテキストが用意されるが、今年はフォコラーレ運動の会員の夫妻によって、家族をテーマとした黙想が書き下ろされた。

十字架の道行きはコロッセオの中から出発し、向かい側のパラティーノの遺跡側へと上っていった。ろうそくの光が一帯に広がり、会衆の祈りがおごそかに響く中、ローマ教区の夫婦と子どもたち、ブルキナファソやペルーの家族、聖地のフランシスコ会士らが、各留ごとに十字架を掲げて歩いた。

教皇は高台に設けられた祈祷台の上で祈りを続けられ、教皇は最後の14留で受け取った十字架を高く掲げられた。

十字架の道行の終了後に行われた説教で、教皇は、無理解や分裂、子どもの問題、経済危機の影響による失業など、多くの困難に直面する現代の家族に対し、苦しみを乗り越えるために、十字架上のキリストを見つめるようにと招かれた。

十字架の道行きにおける教皇の説教は以下のとおり。

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親愛なる兄弟姉妹の皆さん

今、わたしたちは黙想と祈りと聖歌によって、十字架の道のイエスの歩みを思い起こしました。出口のないように見えたその道は、人類の歴史と生活を変革する道でした。それは「新しい天と地」(使徒言行録21,1) に向かう道となりました。

特に今日、聖金曜日に、教会は神の御子の十字架上での死を心を込めて記念し、その十字架の中に新しい希望を生み出す生命の木を見るのです。

苦しみの体験は、人類も、家族をも打ちのめします。人々の歩みは、どれほど苦しく、困難なものでしょう。無理解、分裂、子供たちの将来についての心配、病気、様々な不幸に満ちています。このわたしたちの時代に、多くの家庭は、失業をはじめ、経済危機の結果である他の多くの問題に苦しめられています。

今晩、わたしたちが霊的に追体験した十字架の道行きは、皆にとって、特に家族にとって、困難を乗り越える力を得るために、十字架にかかられたキリストを見つめるようにとの招きです。

イエスの十字架は、各人に対する神の愛の最高のしるしです。愛されることを必要とする人間とっての、ありあまるほどの答えです。わたしたちが試錬に会う時、わたしたちの家族が苦しみや問題に直面する時、キリストの十字架を見つめましょう。

わたしたちはそこに歩き続けるための勇気を見出し、聖パウロの言葉を堅い希望をもって繰り返すことができるでしょう。「誰がわたしたちをキリストの愛から引き離すことができるでしょう。災いか、苦しみか、迫害か、飢えか、裸か、危険か、剣か。しかし、わたしたちは、愛してくださった方によって、これらすべてのことにおいて、輝かしい勝利を収めています」 (ローマ8,35.37)。

苦しみにおいて、困難において、わたしたちは一人ではありません。家庭は一人ぼっちではありません。イエスはいつもその愛をもって共にいて、その恵みをもって支えてくださいます。わたしたちが前進するための力をくださるのです。ですから、人間的な混乱や困難が、わたしたちの生活や、家族の一致を傷つける危険がある時、キリストのこの愛にこそ、わたしたちは向かわなければなりません。

キリストの受難と、死と、復活の神秘は、希望をもって歩み続けるようわたしたちを励ましています。苦しみや試練の時は、キリストへの信仰をもって生きるなら、すでに復活の光、よみがえった世の新しい生命、キリストの言葉を信じるすべての人の復活を含んでいるのです。

あの十字架にかかられたお方、神の御子において、死そのものも新たな意味と方向性を獲得します。贖われ、勝利したその死は、新しい生命への通過点となりました。「もし麦の粒が地に落ちて、死なないならば一粒のまま留まるが、死ねば多くの実を結ぶ」 (ヨハネ12,24)。

わたしたちを聖母マリアに託しましょう。聖母は十字架の苦しみの道を、その子イエスと共に歩みました。イエスの死の時にも、聖母は十字架の下に立っていました。聖母は教会の誕生にあたって、いつも主の現存に生きるよう教会を励ましました。聖母が、受難の神秘を通して復活の神秘へ、キリストの復活から輝き出るあの光に向けて、わたしたちとすべての家庭の心を導き、苦しみと死に対する、愛と喜びと生命の決定的な勝利を示してくださいますように。アーメン