2010-04-04 18:48:30

主の復活:ウルビ・エト・オルビ、ローマと世界に向けた教皇メッセージ(2010.4.4)


「主を賛美しよう。主はまことに栄光に満ちておられる」

親愛なる兄弟姉妹の皆さん

復活祭の喜びをこの典礼の言葉をもって皆さんに告げたいと思います。これは、紅海を無事に渡りきった後で、ヘブライ人たちが歌った賛歌です。

海の中の乾いた場所を通過しながら、ファラオの兵士たちが水に襲われるのを見たモーセと、アロンの姉ミリアム、そして他の女性たちは、踊りながらこの賛歌を歌ったと「出エジプト記」は語っています。「主に向かって歌え、主は大いなる威光を現し、馬と乗り手を海に投げ込まれた」(出エジプト 15,19-21)

全世界のキリスト者は、復活徹夜祭においてこの賛歌を繰り返し歌い、さらに特別な祈りがその意味を説明しています。この祈りは キリストの復活の満ち満てる光の中でこの喜びを私たちのものとしています。

「神よ、私たちが生きているこの時代でも、あなたが古の昔に行った不思議なみ業が再び輝きわたるのを私たちは今、目にします。あなたがその力強い御手であなたの民をファラオの圧迫から解放するためにされたことを、今あなたはすべての民の救いのために、洗礼の水を通して行われるのです。どうか全人類が、今アブラハムの子らの中に受け入れられ、選ばれた神の民の尊厳に与ることができますように」

福音はかつての前表の実現を啓示しました。イエス・キリストはその死と復活によって人間を罪の根本的な隷属から解放しました。そして、真の意味での「約束の地」、神の御国、正義と愛と平和の国への道を開きました。

この「出エジプト、脱出」は、まず何よりも人間自身の内部で行われます。それはキリストがまさしく過ぎ越しの神秘において私たちに与えて下さった洗礼の結果であり、聖霊において新たに生まれ変わることにあります。古い人は新しい人にその場を譲り渡します。かつての生命は過ぎ去り、新しい生命の中に歩み始めるのです(ローマ6,4)。しかし、この霊的な「脱出」は、あらゆる人間的側面を個人的にも社会的にも新たにする総合的な解放のはじめに過ぎません。
そうです、兄弟たち、復活は人類の真の救いです。もし「神の子羊」キリストが私たちのためにその御血を流さなかったならば、私たちにはどんな希望もなかったでしょう。私たちの、そして全世界の運命は、避けようもなく死に到ったことでしょう。

復活はすべての流れの方向を変えました。キリストの復活は新たな創造です。樹木全体を生き返らせる接木のように、すべてに新たな生命を与えるのです。それは善、生命、そして赦しの側からすべてを根本的にくつがえし、歴史の最も深い方向性を変えてしまったのです。今私たちは自由です、救われたのです。だからこそ、私たちは心の底から「主を賛美しよう、主は実に栄光に満ちたお方だから」と歌うのです。

洗礼の水から上がったキリスト者たちは、この救いを告げ知らせ、罪から解放され、元の美しさ、善、真理に戻された新たな生命である過越し「復活」の実りをもたらすよう全世界に派遣されました。キリスト教徒たち、特に聖人たちは、この2千年間にわたり絶え間なく、復活の生きた体験によって歴史を豊かなものとしてきました。

教会は「脱出」の民です。なぜなら絶えず「過越の神秘」を生き、さらにすべてを新たにするその力をいつでもどこでも広め続けているからです。今日の私たちにも「脱出」が必要です。それは表面的な調整ではなく、精神的・倫理的回心のことです。人の良心から始めて、根本的な変化がなければどうにもならない根深い危機から脱出するためには、どうしても福音の救いが必要です。

主イエスに懇願します。中東世界において、特にイエスの死と復活によって聖化された聖地で、人々が戦争・暴力から、平和と共存への真の決定的な「脱出」を図ることができますように。

キリスト教共同体に、特に多くの試練と苦しみを体験しているイラクにおいて、復活された主が、高間に集う使徒たちに向けられた「あなたがたに平和があるように」(ヨハネ20,21)というあの慰めと励ましに満ちた言葉を繰り返してくださいますように。

麻薬売買に関する犯罪の危険な再発傾向にあるラテン・アメリカやカリブ諸国にとって、キリストの復活が平和的共存と共通善の尊重の勝利をしるすものとなりますように。

最近の大地震の悲劇に打ちのめされたハイチの愛する人々が、悲嘆と絶望から抜け出し、国際援助に支えられながら、新しい希望へと「脱出」することができますように。また、同じく大災害に打たれたチリの愛する人々も、信仰に支えられ、力強く再建の業に励むことができますように。

復活されたキリストの力において、アフリカにおいても破壊と苦しみを生み続ける紛争に終止符を打ち、発展の保証である和解と平和に到達しますように。特にコンゴ民主共和国、ギニア、ナイジェリアの未来を主に託します。

復活されたキリストが、信仰のゆえの迫害、特にパキスタンで起こっているような死に到るまでの迫害の苦しみに遭遇しているキリスト者たちを支えてくださいますように。テロリズムや、社会的・宗教的差別に苦しむ国々に、復活のキリストが対話と平和的共存へ向かって再び歩む力を与えてくださいますように。

経済・金融活動が真理と正義、兄弟的助け合いの規範によって推し進められるよう、すべての国の責任者たちにキリストの復活が光と力を与えて下さいますように。

また、今、広まりつつある「死の文化」の多様で悲劇的な様相を克服し、あらゆる人間の生命が尊重され受け入れられる、愛と真理の未来の構築のために、キリストの復活の救いの力が人類全体を蔽い尽くしますように。

親愛なる兄弟姉妹の皆さん、復活はいかなる魔法も行いません。紅海を渡った後にヘブライ人たちが砂漠を見出したように、教会も復活の後に喜びも希望もありまた痛みや苦悩もある歴史を見出すのです。

しかし、この歴史はすでに変えられています。この歴史は新しい永遠の契約によって記されています。そして、実際に未来に向けて開かれた歴史なのです。それゆえ希望において救われた私たちは、心の中で昔の、しかし同時にいつも新しいあの賛歌を歌いながら、私たちの旅路を続けましょう。

「主をほめたたえよう、主は実に光栄に満ちているのだから」







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