2009-02-26 13:56:21

バチカン市国創設から今年で80周年:市国行政庁長官ラヨロ枢機卿に聞く


2009年は、バチカン市国にとって、創設から80年の節目に当たる。

1929年2月11日、イタリア王国と教皇庁の間に、ラテラノ(ラテラン)条約が結ばれた。ラテラノ条約という呼称は、署名式が行われた場所、ローマのラテラノ宮殿に由来する。この条約により、教皇庁はバチカン市国における独立と主権を認められた。

イタリア統一後に発生したいわゆる「ローマ問題」、すなわち教皇と聖座が存在すると同時に、イタリアの首都でもあるローマの位置づけをめぐる長年の論争は、同条約締結によってようやく解決を見た。

市国誕生80年を迎えるにあたり、バチカンではこのテーマをめぐる学術会議や、記念コンサートが行なわれた。

バチカン市国の役割や外交などについて、バチカン市国行政庁長官ジョヴァンニ・ラヨロ枢機卿にインタビューした。

1.今年、バチカン市国創立80周年を記念します。80年前といいますと、ちょうどイタリアも国家として刷新の時期にありましたが、その時代と比べて現在イタリアとバチカンとの関係はどのように変わってきていますか。

バチカン市国は突然誕生したわけではありません。すでに一国として受け入れられる下地は徐々にできあがっていました。そのことに関して、教皇庁のモンシニョーレ・ボナベントゥーラ・チェレッティが日記に書き残しています。彼は1919年6月1日にパリで、時のイタリア政府のビットリオ・エマヌエレ・オルランド議員と交わした会談に触れていますが、その時すでに1929年に実現するラテラノ条約を予想させる見解を打ち出しています。もちろん、ラテラノ条約締結によって、より緊密な両国の協力体制を得た新たな時代が始まりました。

2.教皇が全世界に散らばっているカトリック信者たちの霊的指導者としての権威遂行のために一国の元首であるということの意義はどこにあるのでしょうか。

教皇がバチカン市国という一国の元首であるということの意義は、教皇が教会指導にあたって、また教会だけではなく全人類に向けてキリストの福音のメッセージを発信するにあたり、いかなる政治的干渉も受けないということにあります。キリストのこの地上での代理者は、いかなる場合にも自主独立、完全に自由でなければなりません。教皇はただ神に依存するのみで、いかなる他の地上権に依存するものであってはならないのです。バチカン市国は、国土としては最小のものではありますが、教皇に対し、外部のあらゆる政治的干渉からの完全な自治独立を保証するものです。

3.ラヨロ枢機卿は、何年間か聖座の外務大臣をされていました。国際社会にあって最も小さな国の外交上の困難とはどのようなものでしょうか。

国際社会における外交問題で、バチカン市国に直接関係するものは大変稀です。しかし、聖座の国際外交活動は非常に活発です。この外交活動は政治的権力に基づくものではなく、理性と特に神の言葉の持つ力に基づくものです。聖座が対面する世界の問題とは、一般に教会生活そのものに深く関係するものです。たとえば、何よりもまず各国における教会の自由、すなわち、信者をはじめ司教たちが、キリストの代理者でありかつ使徒聖ペトロの後継者である教皇との関係において自由を保つことなどです。
しかし、聖座の国際活動はこの分野に限りません。特に人権に関する重大問題、たとえば生命、食糧、人間のもつ自由の中で第一の自由だとも言える信教の自由、すなわち人間同士そしてひいては人間と神との関係に直接関係する自由の擁護に力を尽くしているのです。
他にも重要な問題、最も貧しく弱い国々の経済発展について、さらに貧しく恵まれない人々の福祉などにも心を配っています。また今日ヨーロッパや中東の国々、さらには世界の各地でも問題になっている移民・難民問題にも心を砕いているのです。これらの取り組みのすべては、教会が最も心にかけている問題、平和の樹立という一大課題に関るものです。

4.バチカンの城壁の中の何となく神秘的な世界に、今日、多くの人々が興味を抱いています。神秘的で分かりにくい印象を持たれることもあるバチカンですが、今回のバチカン市国創立80周年を機に、もっと門戸を開き変化させたほうがいいとお考えでしょうか。

バチカンが閉じられた神秘の国だというのは、一種の神話のようなものではないでしょうか。私が思うに、それは現実にはまったく根拠のないことです。聖座やバチカン市国の法律や規則など一般的な情報は、バチカンの広報に問い合わせることができます。何よりもバチカンの動きは、聖座の活動そのものや、バチカンから発表される様々な資料などを通して知ることが可能です。それ以外にも、全世界に向けて39ヶ国語で運営されているバチカン放送のニュースがありますし、さらに新聞オッセルバトーレ・ロマーノが、教皇の活動やバチカンに関する毎日の様々な出来事を伝えています。同紙の日刊版はイタリア語、週間版は他のいくつかの言語で出版されています。加えてバチカン市国のインターネット公式サイトもあります。最近ではYouTubeを通して映像も見ることができます。バチカン市国創立80周年記念は、「神秘の国」と思われながらも、実際はいとも単純で明らかなバチカンについて、よりよく知るための機会を提供してくれるのです。







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