2009-02-13 17:39:03

聖ヨハネ・クリマコを考察、教皇一般謁見


教皇ベネディクト16世は、バチカンで11日、水曜恒例の一般謁見を行なわれた。

謁見中のカテケーシス(教会の教えの解説)で、先週使徒聖パウロをめぐるテーマを終了された教皇は、この日より中世の東西キリスト教著述家の考察に戻られた。

今回、教皇は6世紀のシナイ山の修道者、聖ヨハネ・クリマコ(ヨアンネス・クリマコス)を取り上げられ、その生涯と功績を以下のように紹介された。

聖ヨハネ・クリマコは、575年頃に生まれた。「クリマコス」は「梯子の・階段の」を意味する。この呼び名は、彼が修道者のために記した著書「天国への梯子」による。

彼が生きた時代、東ローマ帝国は他国とのたび重なる戦いによって領土を少しずつ失い、危機的状況に陥っていた。しかしこうした中、教会だけはその機能を保ち、難しい時代にあっても特に修道院を中心に宣教や文化・社会的活動を行っていた。クリマコはこうした環境の中で偉大な足跡を残すこととなった。

モーゼが神と出会ったシナイ山において、ヨハネは16歳で修道生活に入った。20歳で隠遁生活者となったが、孤独の中にも人々との霊的交流をいとわず、40年間にわたる隠修生活は神と人への愛を育てるものとなった。その後、シナイ山の大修道院の院長に選ばれ、修道院の生活に戻った。死の前に修道院長を辞して、隠遁生活に戻り、650年頃帰天した。

クリマコの「天国への梯子」は、霊的生活のあり方を総合的に捉えたもので、修道者が世と決別し、愛における完徳に達するまでの歩みを30段の階段として表している。

これらの歩みは、大まかに3つの段階に分けられる。

一段階目は、福音的・霊的な意味で幼児の状態に戻るために、この世のものからの離脱を説き、そのために純心、断食、貞潔を基礎とし、従順と謙遜の道を通るよう勧めている。

二段階目の歩みでは、様々な欲望との精神的闘いを具体的に解説している。クリマコは、欲望それ自体は良いものでも悪いものでもないとし、欲望との霊的戦いは愛と真理である聖霊の火によって清められ、苦行と恵みを通して神へと導かれると述べている。

三段階目は、キリスト者の完徳の道が説かれる。中でもあらゆる自分の行動を「識別」する力の大切さが強調され、霊魂の平静、心の平和に到達することで神の神秘の深みを観想することができると記される。そして、階段の最後の段は、信仰・希望・愛(カリタス)に捧げられている。

教皇は、中世の修道者、聖ヨハネ・クリマコの教えは、現代のキリスト者の霊的生活にも変わりない示唆を与えてくれると述べ、同聖人に倣い、信仰・希望・愛の階段を通って真のいのちに近づくよう、信者らを招かれた。







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