教皇フランシスコは、24日深夜、バチカンの聖ペトロ大聖堂で、主の降誕を祝うミサを捧げられた。
このミサでは、冒頭に主の降誕を告げる「カレンダ」が朗唱された。教皇は祭壇前のまぐさ桶の覆いを取り除き、幼子イエス像に献香。続いてケニア・ウガンダ・中央アフリカ・スリランカ・フィリピンなど、教皇が今年訪れた国々の子どもたちが花輪を幼子に捧げた。
説教で教皇は、宿がなく、馬小屋のまぐさ桶に寝かされた幼子イエス、世の貧しさの中に生まれた神の御子の降誕の神秘を観想するよう招かれ、神の栄光の光は、この何も無い所からあふれると説かれた。
そして、消費や享楽、豊かさに目を奪われがちな現代社会に対し、節制した態度、簡素で本質的な生き方を呼びかけられた。
教皇フランシスコの2015年降誕祭深夜ミサの説教は以下のとおり。
**********
この夜、「大いなる光」(イザヤ9,1)が輝きます。わたしたち皆をイエスの降誕の光がまばゆく照らします。「あなたは深い喜びと、大きな楽しみをお与えになった」(同9,2)。預言者イザヤのこの言葉は、なんと真実で、今にふさわしいものでしょうか!わたしたちの心はすでにこの時を待って、喜びに満ちていました。しかし、今、その気持ちはもうあふれるばかりとなりました。なぜなら約束は成し遂げられ、現実となったからです。
この夜の神秘が持つメッセージが、真に神から来るものであることは、この喜びが確かに教えてくれます。もう疑うことはありません。それは懐疑的な人々にまかせましょう。理知にのみに問う人々は真理を見つけることができません。もう無関心でいることもできません。無関心は愛することができない人の心を占領します。なぜなら彼らは何かを失うことが怖いのです。悲しみはもう追い払われました。幼子イエスは真に心を慰める存在だからです。
今日、神の御子がお生まれになりました。すべてが変わります。世の救い主は、わたしたちと同じ人間となっておいでになりました。それはわたしたちを一人に置き去りにしないためです。おとめマリアは御子をわたしたちに新しい命の始まりとして与えてくださいました。
罪の闇に閉じ込められがちなわたしたちを再び照らすために真の光が訪れました。そして、今、わたしたちは本当の自分を再び見出すのです!
この夜、目指す地にたどりつくための道すじが示されました。今、恐れやおののきを捨てましょう、光がベツレヘムへの道を照らしているからです。じっとしていることはできません。留まってはいられません。まぐさ桶の中に寝かされたわたしたちの救い主を見に行かねばなりません。
この幼子が、イザヤの預言のとおり「わたしたちのために生まれた」「わたしたちに与えられた」(イザヤ9,5)、それがわたしたちの喜びの理由です。2千年もの間、世界中の道を歩み、この喜びをすべての人に伝えてきた一つの民に、「平和の君」を知らしめ、それぞれの国において「平和の君」のために役立つ道具となる使命が託されました。
キリストの降誕について聞く時、沈黙のうちに、幼子イエスに語らせましょう。そして、その御顔を見つめたまま、その言葉を心に刻みましょう。幼子イエスを腕に抱き、また幼子から抱擁されてこそ、わたしたちの心に終わることの無い平安が訪れるでしょう。
この幼子は、わたしたちに何が本当に人生で大切かを教えてくれます。幼子イエスは世の貧しさの中に生まれました。幼子とその家族のために宿がなかったからです。彼らは馬小屋で夜露をしのぎ、幼子は家畜のためのまぐさ桶に寝かされました。それにも関わらず、この何も無い所から、神の栄光の光があふれるのです。ここから、心の素直な人々にとっての、真の解放と永遠の贖いの道が始まるのです。
この幼子に、神なる御父の優しさと、いつくしみ、愛ある御顔を認めることができます。その御顔はイエスの弟子であるわたしたちすべてに、使徒パウロが教えたように、不信心と現世的な欲望を捨てて、思慮深く、正しく、信心深く生活するように(テトス2,12)と招くのです。
消費や享楽、豊かさや贅沢、見かけや自己陶酔に浮かれがちな社会において、幼子イエスは、節制した態度、すなわち、簡素で、均衡がとれ、首尾一貫した、本質的な生き方をわたしたちに示しています。
しばしば罪びとに対して厳しく、罪に対してはルーズな世界にあって、強い正義感を育て、神の御旨を実行する努力が必要です。無関心で、時に容赦の無い文化の中で、わたしたちの生き方はこれに対して、憐れみと、共感、同情、いつくしみに満ち、祈りの泉から毎日汲み取ったものでなくてはなりません。
神の御子、幼子イエスを観想しながら、わたしたちの目もまた、ベツレヘムの羊飼いのように、驚きと感動に満ちたものとなりますように。幼子イエスを前にして、わたしたちの心から祈りがほとばしります。「主よ、いつくしみをわたしたちに示し、わたしたちをお救いください」(詩編85,8)。
All the contents on this site are copyrighted ©. |