2013-02-14 17:52:27

「心から神に立ち返れ」教皇、バチカンで「灰の水曜日」の儀式


13日、カトリック教会の典礼暦は「灰の水曜日」を記念した。「灰の水曜日」と共に、教会の暦は復活祭に向けての祈りと償いの期間「四旬節」に入った。

同日夕方、教皇ベネディクト16世はバチカンでミサを捧げられ、この中で伝統の「灰の儀式」をとり行われた。

引退を前にしたベネディクト16世が司式する公の宗教儀式はこれが最後とあって、ミサ会場の聖ペトロ聖堂は参加者でいっぱいとなり、式は大きな感動と張りつめた空気の中に進行した。

説教の冒頭で教皇は、通常、アベンティーノの丘の聖サビーナ聖堂で行なわれる「灰の水曜日」の宗教行事が、今回は参加者多数等の理由から聖ペトロ大聖堂で行なわれることになった経過に言及。皆で聖ペトロの墓を囲み、今特別な時にある教会の歩みをその取次ぎに託し、最高の牧者である主キリストにおける信仰を新たにする機会としたいと話された。

また、教皇は間もなくその任務を終えるにあたり、この場を借りて、ローマ教区の信者たちをはじめ、すべての人々に感謝したいと述べ、皆の祈りを願われた。

「今こそ、心からわたしに立ち返れ、断食し、泣き悲しんで。衣を裂くのではなく、お前たちの心を引き裂け」という、ミサ中の朗読箇所、ヨエル書(2.12-18)の一節を示された教皇は、主に立ち返るとはどういうことかをテーマに、次のように話された。

「神に立ち返ることがわたしたちにできるのでしょうか。そう、できるのです。わたしたちの心にはないその力は、神ご自身の心からほとばしるからです。それは神のいつくしみの力です。」

「神に立ち返ることは『恵み』として可能になります。ただそれは、主の恵みが心の奥深くに入り、心を揺さぶり、わたしたちにその心を『引き裂く』力を与えてくれた時に可能となるのです。」

「わたしたちの時代においても、多くの人がスキャンダルや不正、-それらは当然、他人が犯した事柄ですが-これらを前に『衣を引き裂く』ことはあるかもしれない。しかし、自分の良心や意志について、回心と新たにされることを神に願いながら、自らの『心を引き裂く』ことができる人は、少ないように思われるのです。」

教皇は、そして教会の共同体的本質について触れられた。

「『心からわたしに立ち返れ』という神の呼びかけは、個人だけでなく、共同体にも向けられたものです。」

「教会がいう『わたしたち』は、イエスにおいて一つにされた共同体のことです。信仰は、必然的に教会的性質を持つものです。」

「教会の示す顔が、時にゆがめられていることがあります。特に、教会の一致への反対や、教会内の分裂がその原因だと思います。個人主義や競争意識を乗り越え、四旬節をより強められた教会の交わりの中に生きることが、信仰から遠ざかった人々や無関心な人々に対する謙遜で貴重な証しとなるのです。」

さらに、教皇は宗教的態度についても話された。

「イエスは、神との関係の質と真理がそれぞれの宗教的態度の正当性を決めると強調しています。それゆえイエスは、人の称賛や好意を求める態度に見るような、宗教的偽善を非難しています。キリストの真の弟子は、自分や観衆を必要としません。彼が必要とするのは主だけです。」

「義人にとっての報酬は、神ご自身です。地上において神と一致して信仰を歩み、この世の人生の終わりに、平安と光のもとで永遠に神の御顔を間近に仰ぎ見ることなのです。」

このように説かれた教皇は、「心から神に立ち返れ」という招きを、わたしたちを新たな人間に変える恵みとして受け入れるよう、皆に回心を呼びかけられた。

教皇の説教に続き、「灰の式」が行われた。

「灰の式」は、死と悔いあらための象徴である灰を、額や頭に受ける儀式で、その灰は、前年の「受難の主日」(復活祭の一週間前の日曜日)に祝福されたオリーブや棕櫚の枝を燃やしたものが使用される。

教皇は、聖ペトロ大聖堂主席司祭アンジェロ・コマストリ枢機卿から、まずご自分の頭に灰を受けられ、この後、「回心し、福音を信じなさい」の言葉と共に、他の枢機卿や司教、司祭、信者らに自ら灰を与えられた。

ミサの終わりに、バチカン国務長官タルチジオ・ベルトーネ枢機卿が、教皇に深い感謝の言葉を述べた。

ベルトーネ枢機卿は、教会がその歩みの中でベネディクト16世を司牧者として得たことを神に感謝すると共に、教皇の示した模範に対する感動と感嘆を次のように伝えた。

「教皇がわたしたちに与えてくださった、単純で謙遜な『主のぶどう畑の働き手』としての輝ける模範に感謝します。この主のぶどう畑の働き手は、どのような時にもなすべき一番大切なことを知っていました。それは神を人々にもたらし、人々を神のもとに導くことでした。」

閉祭の歌が合唱される中、笑顔で祝福を与えながら退場される教皇に、人々からの惜しみない拍手が大聖堂内にいつまでも鳴り響いた。








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