2008-11-24 17:15:01

188人殉教者列福式:「大いなる喜びの日」「恐れずに進もう」


ペトロ岐部と187人殉教者の列福式が、24日、長崎でとり行われた。

列福ミサは、教皇特使、サライヴァ・マルティンス枢機卿(教皇庁列聖省前長官)出席のもと、東京名誉大司教、白柳誠一枢機卿の司式で行われた。

不安定な空模様にもかかわらず、会場の長崎県営野球場ビッグNスタジアムには、朝からおよそ3万人の信者が集い、殉教者らの列福を共に祝った。また、式の模様はインターネットによる中継映像でも伝えられた。

この日、福者の列に加えられた188人は、江戸時代初期、キリスト教弾圧のため1603年~1639年にかけて日本各地で殉教した日本人の男女で、それぞれ年齢や社会的立場も異なる中で、同じ一つのキリスト信仰を命をもって証した人々。これらの殉教者の内訳は以下のとおり。

八代の殉教者11人(福岡教区)、萩・山口の殉教者2人(広島教区)、薩摩の殉教者・レオ税所七右衛門(鹿児島教区)、生月の殉教者3人(長崎教区)有馬の殉教者8人(長崎教区)、天草の殉教者・アダム荒川(福岡教区)、京都の殉教者52人(京都教区)、小倉・大分・熊本の殉教者(加賀山一族)18人(福岡・大分教区)、江戸の殉教者・ヨハネ原主水(東京教区)、広島の殉教者3人(広島教区)、島原・雲仙の殉教者29人(長崎教区)、米沢の殉教者53人(新潟教区)、長崎西坂の殉教者・ミカエル薬屋・ニコラオ福永ケイアン・ジュリアン中浦の3人(長崎教区)、大阪の殉教者・ディオゴ結城了雪(大阪教区)、西坂の殉教者・トマス金鍔次兵衛(長崎教区)、江戸の殉教者・ペトロ岐部(東京教区)。

武士や農民、司祭、修道士、伝道士、信者の家族など、その一人ひとりの信仰生活と殉教までの軌跡は、当時の日本のキリスト教共同体の姿を生き生きと伝えるだけでなく、今日の日本のカトリック教会のまぎれもない礎をなすものといえる。

同日正午、聖歌の調べと共に入祭の行列が始まり、日本全国から参加した大勢の司祭たちと全司教団の列が長く続いた。また、このミサには教皇庁福音宣教省長官、ディアス枢機卿はじめ、ベトナム、インド、韓国、台湾などアジア諸国の司教ら、さらに聖公会やルーテル教会の代表者らも参列した。

ミサの前半、列福の儀式が行われた。日本司教協議会会長の岡田武夫・東京大司教がペトロ岐部と187人を福者に列するように要請し、ポストラトール(申請者代理人)のロホ神父が188名を総括的に紹介した。

続いて、188人の殉教地である日本の9教区の司教らが、殉教者らの人となりと殉教の場所・時を述べた。

これらを受けて、教皇特使のサライヴァ枢機卿は、教皇ベネディクト16世から託された列福宣言文をラテン語で読み上げた。この中で、枢機卿は188人福者の祝日を7月1日に祝う旨を発表した。

宣言文の後、新福者らの肖像画が除幕され、会場にはハレルヤ唱が響いた。

岡田司教は日本のカトリック教会を代表し、教皇特使に感謝の言葉と日本の教会の大いなる喜びを述べた。

列福の儀式の後に続けられたミサの説教で、白柳枢機卿は、殉教者とは信仰の真理、すなわちイエス・キリストの恵み、神の愛を忠実に、血をもって証しした人々であると強調した。

そして、フランシスコ・ザビエル来日と共に始まった日本の教会の歴史は、また激しく長い迫害と殉教の歴史の始まりでもあったと、その試練に満ちた過去を振り返った。

白柳枢機卿は、188人殉教者たちに共通することとして、日本の各地から選ばれ、時代を超えて尊敬されてきた人々であることを紹介。その内訳は、男性だけでなく女性も多く含まれ、年齢も高齢者から幼児までに至り、また職業も武士や、奉公人、農民など様々で、一家そろっての殉教もあったことを思い起こし、家庭教会の重要性を指摘した。

同枢機卿は、殉教者たちのメッセージとは何かを考える中で、「だれが、キリストの愛からわたしたちを引き離すことができましょう」(ローマの信徒への手紙)と言った聖パウロと同じ信仰を日本の殉教者たちも生き、「信仰を生きることを恐れるな」と私たちに告げている、と述べた。

また、殉教者の中には多くの家族が含まれるが、共通の価値観で結ばれ、困難の中で助け合う、死よりも強い愛で結ばれた家庭は私たちの鏡であるとも述べ、殉教者らはこのような家庭をつくるようにと私たちに呼びかけている、と話した。

さらに枢機卿は、米沢の例に見られるように、殉教者らが近隣の人々と誠実に交流していたことを指摘、隣人との交わりを大切にし、隣人を愛するようにとのメッセージをも示した。

殉教者たちの生き方は、多くの自殺者がいる日本において、生きるとは、死ぬとは、人生の目的・意味とは何かを深く考えさせると共に、人間の尊厳や、個々の能力を生かすこと、命の権利を尊重し、武器売買や戦争のない、すべての人が大切にされる社会を求めるよう私たちを招いていると枢機卿は説き、「恐れず、一緒になって進みましょう」とすべての信者らに力強く呼びかけた。







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