2008-06-16 19:00:49

教皇、ブリンディジ訪問「キリストの憐れみのもと信仰を歩もう」


教皇ベネディクト16世は、15日、司牧訪問先の南イタリア・ブリンディジで市民のためにミサを捧げられた。

前日14日夜、教皇は最初の訪問先サンタ・マリア・ディ・レウカからブリンディジに向かわれた。

プーリア州・ブリンディジは、アドリア海に面した港湾都市。古代からアッピア街道によってローマと繋がり、バルカン半島、ギリシャ、中東方面など、特に東方への海の玄関口として重要な役割を果たしてきた。

ブリンディジに到着された教皇は、さっそく海を臨む広場で、多くの若者たちをはじめとする市民らとの出会いを持たれた。同地をローマ教皇が訪れるのはおよそ1000年ぶりとあって、その歓迎は非常に熱心なものとなった。

教皇は挨拶の中で、ブリンディジが「海に向けて開いた扉」として受け入れの精神に満ち、特にバルカン危機の際はクロアチア、モンテネグロ、アルバニア、マケドニアなどからの難民に対し、行政と教会が協力して寛大な援助を行なっていたことを思い起こされ、深い感謝のことばを述べられた。

また、教皇はブリンディジとプーリア州に、さらなる人間的・社会的価値の推進を期待される中で、南イタリアの就職難問題にも触れ、若者たちが安易な儲けや、人工的な楽園、ゆがんだ物質的満足に逃避しないようにと願われた。

青い空に恵まれた翌15日の朝、ブリンディジ港のサンタポリナーレ埠頭は、教皇ミサに参加する7万人の信者で埋まった。

この日のミサには、イタリアの正教会のジェンナディオス府主教の姿も見られた。教皇は府主教に歓迎の挨拶をおくられると共に、東方に開いたブリンディシのカトリック教会のエキュメニカル運動への積極的な取り組みを喜ばれた。

「キリストの憐れみ」のもとに同地の教会の信仰の歩みを続けていくよう励まされた教皇は、キリスト教的憐れみとは、単なる同情や福祉主義ではなく、希望に生かされた連帯と分かち合いであると述べ、復活のキリストこそが世界の希望であると強調された。

教皇はこの後、信者らと共に日曜正午のアンジェラスの祈りを唱えられた。

午後、教皇は司教との集いや司祭らとの出会いを持たれた後、ブリンディジを後にされ、バチカンに戻られた。

この訪問における、14日の教皇ブリンディジ到着の挨拶は以下のとおり。

親愛なる兄弟姉妹の皆さん、

今日、こうしてブリンディジの兄弟姉妹の皆さんにお会いし、共に祈ることができ、大変嬉しく思います。皆さん一人ひとりに私の心からの挨拶を送ります。

皆さんの町はアドリア海で他の民族との交易のために重要な役目を果たしてきました。事実、ブリンディジはかつて東方に向かう商人、兵士、それに学生や巡礼者たちが出発する、海外に向かって大きく開かれた港でした。最近では、クロアチア、モンテネグロ、アルバニア、そしてマケドニアからの難民たちが上陸している様子を新聞やテレビが報道していました。この地方が現に抱えている経済上の困難にも関らず、皆さんが難民たちのために寛大に奉仕してくれたことを思い出し、感謝を表すのは私の義務だと思います。

親愛なるブリンディジ市民の皆さん、あなたがたのこの大きな連帯精神は、皆さんの豊かな社会性と宗教性の伝統的な遺産を形作るものです。これからも皆さんの未来を築き上げるための大きな飛躍を心から期待しています。

皆さんの土地に深く根付いた素晴らしい特徴として挙げたいのは、生命に対する尊重です。そしてさらに、特に今日ますます崩壊の危機にさらされている家庭を大切にするという精神です。社会全体の生命がかかっている家庭を保護するために、善意の人々皆が一つになって協力するということは、真に必要で急を要する重大事です。

あなたがたの社会のもう一つの基盤は、皆さんの祖先が「ブリンディジ魂」の一つとしていた、キリスト教信仰です。絶えず新たな意識をもって刷新される福音への忠誠が、昔と同じように 今日も多くの問題や困難に立ち向かう力となりますように。

この刷新の行為は、この地にこれから創立される大学の精神にも大いに影響を与えています。この新大学はこの地方の宗教・文化・経済的進歩に積極的に寄与することを目標としています。親愛なるブリンディジ市民の皆さん、兄弟愛に動かされてお互いに奉仕し合い、これからもこの町で連帯精神がますます大きく育っていくように努力してください。神様はいつも皆さんのすぐそばにおられ、その恵みを欠かすことはないでしょう。
今これから、ここに集まってくれた若者の皆さんに挨拶したいと思います。あなたがた若者たちの声、生きる喜びは、すぐに私の心にも響きます。皆さんが生きる青年期は、また多くの問題意識が湧き出てくる時でもあります。

特にイタリア南部の抱えている多くの問題について、私もよく知っています。少なからぬ若者たちが、失業問題などから自分の将来に対して不安を抱いています。また同時に、多くの若者たちが安易な儲け話や人工的な楽園にだまされ、ただ物質的満足に惹かれていく危険に瀕していることも十分承知しています。

悪の罠にかからないように気をつけてください。より正義ある未来に開かれた社会に貢献するために、より価値のある生き方を求めてください。神様があなたたちに下さった恵みを、皆さんの若さ、力、知恵、勇気、熱意、そして生きる意志をもって実らせてください。神様の助けにいつも信頼することで、皆さん自身の中にも、また回りにいる人々の中にも希望を育むことができます。進歩がすべての人々のための善になるかどうかは、皆さんと皆さんの心にかかっています。善の道、それは皆さんも知っている通り、一つの名前を持っています。それは「愛」です。愛の中に、ただ本当の愛の中にのみ、あらゆる希望の鍵があります。なぜなら、愛は神に根ざすものだからです。

聖書の中には次のように書かれています。「私たちは、私たちに対する神の愛を知り、また信じています。神は愛です」(1ヨハネ4,16)。神の愛は、イエス・キリストの甘美な憐れみに満ちた顔を持っています。ここで私たちはキリスト教のメッセージの核心に到達したのです。キリストこそ皆さんの疑問や問題に対する答えです。キリストにおいて、人間のあらゆる誠実な渇望の価値は高められるのです。キリストは皆さんの寛大さに期待しています。キリストに出会えるように、キリストに忠実に従いなさい。キリストの教会を愛しなさい。各自が置かれた場にあって、逃げることなく、それぞれの責任感を持ち、勇敢でありなさい。

ここで一つ、皆さんの注意を喚起したいことがあります。それは、教会の牧者たちの声に耳を傾け、教会を知り、理解し、愛するよう努力してくださいということです。教会は人間によって構成されています。しかし、その頭はキリスト御自身であり、その霊がしっかりと導いておられるのです。皆さんは教会の若い顔です。教会に貢献するのを忘れないようにしてください。なぜなら、教会が宣教する福音は、どこにでも広まり得るものだからです。皆さんの友人たちの中であなたたちは福音の使徒となってください。

親愛なる兄弟姉妹の皆さん。皆さんの温かい歓迎に心から感謝します。皆さんの州の少年たちが私宛てに送ってくれた手紙を読みました。親愛なる皆さん、私はこの手紙から皆さんが置かれている現状をよく知ることができました。皆さんの愛情を大変ありがたく思っています。

皆さんが平和と正義の福音を証しできるよう、ブリンディジの皆さんすべてのために、私の心からの祈りを約束します。

プーリアの女王、聖母マリアが皆さんを護り、いつも共にいてくださいますように。 皆さん一人ひとりを祝福します。
 







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