2008-04-24 16:59:41

教皇米国司牧訪問:ホワイトハウスでの歓迎式典における挨拶(2008.4.16)


アメリカ合衆国大統領およびアメリカ国民の皆さん

ただいまお受けした大統領のアメリカ国民を代表する歓迎の言葉に、私は心から感謝します。この偉大な国を訪問するためのご招待に深く感謝します。

私の今回の訪問は、アメリカのカトリック共同体にとって大変意義ある出来事に答えるものでもあります。今年はアメリカ合衆国の最初の大司教区、ボルチモア大司教区設立200周年記念、およびニューヨーク、ボストン、フィデルフィア、ルイビルの各教区設立記念の年でもあるのです。さらに私は全アメリカ国民の客人であることを大変うれしく思います。私は皆さん一人ひとりの友人として、キリストの福音宣教者として、またこの多様性に富んだ社会を非常に尊敬する者の一人としてこの国にまいりました。アメリカにおいて、カトリック信者たちはこれまで長い年月にわたり社会のために大きな貢献をし、また今日も貢献し続けています。今回の私の米国訪問が、アメリカのカトリック信者たちを激励し、これからもますます責任をもって国に貢献するための励みとなることを、心から期待しています。

アメリカ合衆国建国の始めから、アメリカの自由の追求は常に確固たる倫理規範と創造主なる神の統治とに深く根ざしていました。アメリカ建国憲章の草案者たちは、神と自然法にのっとって、すべての人々が平等であり冒さざるべき人権を備えもっているのだという真理そのものを宣言しました。アメリカはその歴史の流れの中で多くの困難と闘いを体験しましたが、その都度、常に変わることなく崇高な基本原理の上に確固として立ち続けました。今日でもアメリカ国民は困難や問題、危機に瀕したときには、必ずこの精神的遺産や基本理念から解決の力を汲み取り続けているのです。

私はこの数日間、アメリカにおけるカトリック信者ばかりではなく、多くのプロテスタントのキリスト教徒たちや他宗教の人々とも会えるのを大変楽しみにしています。歴史的にもこの国においては、カトリック信者だけではなく、すべての信仰者が信仰の自由を保証され、国家構成員としてそれぞれの声を聞かせる権利をも認められてきました。

今日、アメリカはこれまでになく政治的にも民族的にも複雑な問題に直面しています。しかし、より人間的で自由な社会を作り上げるための努力を惜しまず、理に合った、また責任に満ちた対話を通して、宗教的な確信の中に解決の鍵を必ず見つけることができるだろうと信じています。

自由は単に与えられるものではなく、各自にその責任を問うものでもあります。アメリカ国民はそれを経験によって知っています。アメリカのどの都市にも、自由の擁護のために生命を捧げた人々を称える記念碑が必ず立っています。自由の擁護のためには、多くの徳や自己制御、また共通善のための犠牲や恵まれない人々に関する責任感などが必要とされ、それが養われます。誰もがこの自由の尊さを理解するわけではありません。しかし、その少ない理解者の中でも、ヨハネ・パウロ2世教皇は群を抜いています。彼は祖国、東ヨーロッパのポーランドにあって、自らの体験を通して自由の尊さを学んだのでした。

教会は、世界を神の似姿として作られた人間によりふさわしいものとするために、常に貢献したいと望んでいます。教会は、信仰がすべてのことを新しい光の下に照らし出し、福音はすべての男女の崇高な運命とその尊い召命とを啓示していると確信しています。信仰はさらに、私たちの崇高な召命と希望に応えるための力を与えてくれます。健全な民主主義は、国家の将来とその生活に関する決定において、皆さんの建国の父たちがよく承知していたように、政治家たちが倫理的原理に由来する知恵を持ち、真理に導かれる時にのみ、花開くことができるのです。

一世紀以上にわたって、アメリカ合衆国は国際社会において重要な役割を果たしてきました。この金曜日、私には国連で話すという栄誉が与えられました。私は、国連が世界の人々の期待にますます効果的に答えていく努力を続けるよう、激励するつもりです。世界人権宣言60周年記念にあたり、世界の人々が、父なる神が皆のために準備してくれた同じ食卓を囲む兄弟姉妹として、人間の尊厳に相応しい生活ができるよう、ますます心を一つにし、連帯するのは急務を要することだと強調したいと思います。アメリカはこれまで世界中のあらゆるところで起こる自然災害などの犠牲者たちや、必要に迫られている多くの人々の援助に、多大な貢献をしてきました。私はアメリカがこれからも人類社会の発展のための考慮を続行し、世界の民主化のための、また各種の紛争解決のための、忍耐強い働きを続けるだろうと信頼しています。こうしてこれからの若い世代は、真理と自由と正義が花開く世界に生きることができるようになるでしょう。 その世界では、神がすべての人々、すべての男女、すべての子供たちに与えた尊厳と権利とが尊重され、保護され、効果的に促進されるでしょう。

アメリカ合衆国大統領はじめ全国民、友人の皆さん、この国に私を招待してくださったことに対して、再び心からの感謝を申し上げると共に、神がこの国の人々を平和と正義との歩みにおいて、ますます力づけてくださるよう祈ります。

神がアメリカを祝福してくださいますように。

 







All the contents on this site are copyrighted ©.